1. ひとり旅を決意、ちっぽけな理由
当時、私は48歳でしたが3人の子育てとフルタイムの仕事に追われ、ストレスの多い日々を過ごしていました。
子供のことには一切関与しない夫とは、喧嘩を避けるために距離を置き、
会話のない日々を過ごすことが多くなっていた頃のことです。
当時、私が家にいないと思った夫が、子供たちと楽しそうに会話をしているところを
偶然目の当たりにし、「私がいなくても大丈夫なんじゃね?」と、
少し捻くれた感情を抱いていました。

子供たちが成長し、手が離れつつあるこのタイミングで、
自分の時間を持つことにチャレンジしようと決意。
家族から離れることで、自由な気持ちになり、
自分の思考が整理できるかもしれないと考えたのです。
その記念すべき第一歩が、ずっと憧れていた、自転車で琵琶湖を一周する「ビワイチ」だったのです。
一度決意したら、迷いなんて一切ありませんでした。
2. 旅の準備と出発
私が選んだ愛車は TRECのクロスバイク。
ロードバイクみたいなスピードは出ませんが、快適な乗り心地と安定性があり、
初心者のロングライドには最適です。
出発当日の早朝、車に愛車を乗せて自宅を出発し、琵琶湖のスタート地点まで移動しました。
高島郡の道の駅から朝7時にスタート。約193キロの琵琶湖周遊2日コースの始まりです。

DAY1は琵琶湖の南半分を反時計回りに走り、
出発地点とは反対側の彦根市でビジネスホテルに泊まり、
DAY2に琵琶湖の北半分を走って高島市に戻るコースでした。
琵琶湖を半時計回りに走るのは、琵琶湖の湖面を近くで見ながら走るためです。
琵琶湖一周(通称:ビワイチ)は約193km。
フルコースを一日で走るのはかなりの体力が必要なので、2日間かけて無理のないスケジュールを組みました。
夫と子供はどうしたの?
中学生になったばかりの娘と高校生の兄二人には、予め何度も話をしました。
母が不在中、何が起こるのかを一緒にシュミレーションするために、
彼らの機嫌のいい時に話しかけて、同意を得ていました。
同意どころか、母のチャレンジを全力で応援してくれていました。
もしかしたら口うるさい母が不在中に、のんびりできると考えていたのかもしれません(笑)
夫には何も言えずでしたが、
出発の数日前から冷蔵庫に貼ったカレンダーに「琵琶湖一周」と記入してお知らせしました。
料理以外はなんでもできる人なので、困ることなんか何もない…と、考えていました。
3. 走り始めて感じたこと
最初は順調でした。
湖岸沿いの道は平坦で走りやすく、琵琶湖の美しい景色が広がっていました。
晴れた日の静かな朝、爽やかな日差しと風を感じながら、
「私、自由だー!」と心の底から思いながらペダルを漕ぎ始めました。



美しい景色を前に、写真を撮ってばかりでしたので、なかなか前進できませんでした。

午後になると日差しが強くなり、コースも田園風景になります。
ママチャリとは違って、硬いサドルはお尻に激痛を引き起こし、かなり凹みました。

時々オンラインで友達が無事の確認をしてくれるので、気持ちを切り替えることができました。
大津市内を走るときは、自転車コースが車道と並走になるので、車とスレスレの距離を走ります。
それ以外はほぼ安全なコースでした。
大津市内はコンビニも、商業施設も多く、水分補給のために水を買い足したり、
トイレに行くこともできたので全く問題なく、快適に走り抜けることができました。
暑かったので、アイスばっかり食べてました。
4. 旅の中での気づき
旅の途中、子供たちとオンラインで会話をしていた時、
娘が「あれ?パパがグループLINEにいないよ」と発言。
その瞬間、私はペダルを漕ぐ足を止めました。
よくよく確認すると、夫は家族グループを自ら抜け出していました。
「そっか。あの人は妻を応援できる人じゃないんだね。」そう思うと、
なぜか全身の力が抜けるような感覚でした。
これまで夫とは会話はなくてもどこかでお互いに理解していると期待していたのかもしれません。
今回は私が外出することをどう思ったのかわかりませんが、
離婚の引き金になってしまうかもしれないと、覚悟しました。
でも、子供たちは応援してくれている。友人たちも支えてくれている。それで十分。
その気づきが、私をさらに前へと進ませてくれました。
行くしかないって。
5. 美しい景色と達成感
琵琶湖の風景は、お尻が6個くらいに割れそうな激痛と、疲労感を忘れるほど美しいものでした。
水鳥が湖面を優雅に泳ぎ、さえずりが聞こえ、どこかの大学のヨットサークルの帆が見えて
とても綺麗でした。
遠くにかかる美しい橋を眺めながら、「私、本当に琵琶湖を制覇してるんだ」とワクワクしました。
応援してくれている友人達は、当初、一緒にビワイチすることを約束していたメンバーでした。
この年齢になると不思議なことではありませんが、みんな足だの、腰だの痛めてしまい、
結局私が一人でチャレンジすることになりました。
友人たちはオンラインで繋がって一緒に位置情報を確認。
いつも私のペースを心配してくれました。
夕方、陽が落ちたと同時に、彦根城近くのビジネスホテルに到着しました。
正確には、宿泊先のホテルだと思って入ったホテルは、似たような名前の別のホテルでした。
慌てて予約したホテルを探し出し、遅めの到着になりました。
疲れのせいか、クタクタになってホテルに到着し、自転車用の車庫に自転車を停めることができました。

琵琶湖周辺には、ビワイチにチャレンジしている人に優しいホテルが多いです。
Day 1 の走行距離は118キロ。100キロ以上走るとは思ってもいなかったのですが、
ホテルに向かうために自転車道から外れた場所で、道に迷ったり、間違えたりしたので、
余計な距離を走ってしまったようです。
とにかく、無事に到着。友人や子供達に伝えて、シャワーを浴びてそのまま眠る…ワケもなく
飲みに出ました! 笑

6. ゴールの達成とその後
2日目、自転車にまたがった瞬間に激痛!!!
自転車から降りると忘れるのに、自転車に乗ると再び激痛が襲ってきました。
でも、お尻の痛みもピークを超えると痛みではなくなったようです。
Day 2は強風との戦いでした。琵琶湖の北半分は、自然保護区域のようで、水鳥が多く生息しています。
これまでの景色と、また違った風景にうっとりしながら、何枚も写真を撮って距離を縮めることができませんでした。



勾配のきつい山道で自転車を押して歩いたので、ヘトヘトでしたが、いつもロードバイクは優雅に、私の横を走り去っていきます。
時々、狭い道を追い越すときは、後ろから『こんにちは〜』と声をかけてくれます。
どうやら自転車のマナーみたいですね。
何台もロードバイクに追い越されました。同じ自転車なのにハンドルの形が違うだけでなく、
ボディの軽さやギアの多さが全然違う。
男の人が1人でビワイチを楽しんでいる姿はよく見かけましたが、女性はいませんでした。
それだけ貴重な体験をしているのかな?と思うことにしました。



そして、かなりペースが落ちたけど、無事にゴール!
トータル200kmの道のりを走破しました!!!

色んな友人が応援してくれて、やっとゴールした瞬間、涙がこぼれそうに…
ということもなく
「終わったぁ〜っ」と叫んだだけでした
こんなもんでしょうか?
急いで帰宅したかったので、帰宅途中に琵琶湖沿いを走る車中で、車で走ると一瞬なのになぁ
私、ほんとよく頑張ったなぁ…と、思うことができました。

家に帰ると、子供たちが暖かく出迎えてくれ、私の挑戦が成功したことを一緒に喜んでくれました。
大きな意味があったと感じます。
走り終わった感想は、「感動」「達成感」「疲労」の3つでした。
日暮れまでに車に戻らないと、車道が暗くて危ないことがわかっていたので、最後は本当に焦りました。
7. ひとり旅を迷っている女性へ

もし、ひとりで何かに挑戦することに不安を感じているなら、ぜひ一歩を踏み出してみてください。
最初は怖いかもしれません。
でも、チャレンジが終わった時には「やってよかった!」と、あなた自身のバージョンアップを実感できるはずです。
私は子供に挑戦する母の背中を見せたいと思っていたので、達成感が半端ではなかったです。
いつか子供達が私と同じ年齢になったとき、今回の挑戦をなんて思うのか聞いてみたいですね。
若い頃は、無計画でもなんでもできましたが、私たちは計画を立てることでいろんな困難を回避することができます。体力は落ちても知識と経験でなんとかなります。
私は自転車を持っていたのでレンタルサイクルを利用する機会はありませんでしたが、
レンタルサイクルの店はたくさんあります。もし自転車がパンクしてしまったり、何か困ったことがあればサポートを受けられるはずです。
知識や経験で防御本能が働き、逆に挑戦したい気持ちがブロックされてしまう方は、プロのサポートを受けて安全対策をしてからスタートすると楽しめそうですね。
自分のための旅、本当にサイコーでした。
8. その後どうなった
私が経験したことは、それから先の人生において、自分の勲章になりました。
今回の旅を振りかって、当初考えていた『家族から離れることで、自由な気持ちになり、
自分の思考が整理できるかもしれない』については、正直なところ達成感のあまり、
どうでも良いことになりました。
ただ、目標に向かってずっと体を動かしていたので、体力勝負の旅となり、
ゆっくり落ち着いて考える時間がなかった..というのが正直な感想です。
その後、琵琶湖沿いを車で走ったり、特急列車で車窓から琵琶湖を見たときは、
壮大な景色を見て、心の中では『あの琵琶湖を一周した私ってすごくない?』と思えるんです。
翌月、自宅の冷蔵庫に貼ってあるカレンダーに、「富士山」と書きました。笑
